網膜の疾患について

 

眼底には、オレンジ色の網膜が広がり、映像が写る中心部(黄斑部)はやや濃い色調を呈しています。
脳から視神経が入ってくる視神経乳頭は中心のやや鼻側にあります。視神経と一緒に血管(動脈と静脈)が入ってきて網膜の中を枝分かれしながら広がっています。

蛍光眼底造影写真では、血管が白く映し出されます。血管の中を血液が流れてゆく早さや、血管の広がり具合、血管からの血液成分の漏れがないかどうか、血管が詰まっていないかどうか、網膜や脈絡膜の細胞が傷んでないか、異常な血管が出来ていないかどうか、という事が分かります。様々な、網膜や脈絡膜の病気の診断に有用な検査です。

 

■網膜の病気について

目は、よくカメラに例えられますが、網膜は、カメラのフィルムやメモリーにあたる眼底の組織で、目の前の映像を写して画像の情報を脳へ送り出す役割を負っています。
網膜には、神経、血管、結合組織などの精密な組織が集まっていますが、その様子は、瞳を通して直接観察する事が出来ます。 網膜の血管の太さ、動脈硬化の程度、神経細胞の健康状態は、そのまま体の血管や細胞の状態を表しています。
特に、糖尿病、動脈硬化、高血圧による網膜の出血や腫れは、病気の進行や重症度をよく表しています。人間ドックなどで、血液のコレステロールや脂肪が高い、肝臓や腎臓の働きが低下している、血圧が高いと指摘された場合は、内科で精密検査を受けられると同時に、眼科でも眼底検査を受けられることをおすすめいたします。

以下に網膜の病気の代表的なものをいくつか挙げております。

①糖尿病網膜症

②加齢黄斑変性

③網膜静脈閉塞症

 

①糖尿病網膜症

糖尿病の合併症のひとつであり、その症状は自覚されないうちに進行し、自覚症状が現れたときには、すでに失明する一歩手前の状態であることがほとんどです。

失明を防ぐためには糖尿病と網膜症に関して正しい知識をもち、定期的な検査を受けることが大切です。

内科で糖尿病と診断されたら、一度眼科でも詳しい検査を受けましょう。

 

☆糖尿病網膜症について詳しくお知りになりたい方は日本眼科学会のページをご覧ください☆

糖尿病網膜症の方の眼底写真

↑大小の出血がみられる。

↑少し進行した状態で大きな出血が中心に溜まっている

 

糖尿病網膜症の方の眼底写真

蛍光眼底造影写真

蛍光造影剤を使うと新生血管から造影剤が漏えいしているのがわかる(白い部分)

 

増殖性糖尿病網膜症の方の眼底写真

網膜症が進行し、大きな眼底出血を起こしている

 

②加齢黄斑変性

名前のとおり加齢に伴う疾患で中高年の方に多くみられます。網膜の中心にある黄斑が弱り、見たいものが歪んで見えたり、中心が黒く見えるなどの症状が現れます。あまり知られていませんが失明する可能性の高い病気です。

 

☆加齢黄斑変性について詳しくお知りになりたい方は日本眼科学会のページをご覧ください☆

 

加齢黄斑変性の方の眼底写真(右眼と左眼)

 

 

加齢黄斑変性の方の左眼の眼底写真

光干渉計断層写真

新生血管から出血が起こっている。網膜の断層撮影を行うと中心の網膜下に滲出物の貯留と新生血管がみられる

 

加齢黄斑変性の方の右眼の眼底写真

光干渉計断層写真

黄斑部に変性がみられ、断層撮影写真では中心部の網膜下に滲出物の貯留と新生血管がみられる

 

③網膜静脈閉塞症

動脈硬化があったり血液が何らかの異常で粘くなると、網膜の静脈が閉塞することがあります。それにより網膜の出血や中心部の黄斑に浮腫が起こったり、新生血管という異常な血管が生えて硝子体出血を起こし次第に視力が低下します。

治療としては、レーザー治療、硝子体手術、抗VEGF抗体硝子体内注射などがあります。

 

☆網膜静脈閉塞について詳しくお知りになりたい方は日本眼科学会のページをご覧ください☆

 

網膜静脈閉塞の方の右眼の眼底写真

網膜に出血がみられる

 

光干渉計断層写真

網膜に浮腫がみられる

 

上記の方のレーザー治療6ヶ月後の眼底写真

上記の方のレーザー治療6ヶ月後の光干渉計断層撮影

以前の出血はひき、網膜の浮腫もほぼなくなっている。網膜の白い点はレーザー治療の跡